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Sunday Pickup

週末は注目作品の公開が続々。
今週おすすめの旧作は「トレインスポッティング」(1996年:ダニー・ボイル)、「タンジェリン」(2015年:ショーン・ベイカー)、「ジョン・ウィック」(2014年:チャド・スタエルスキー)。


■トレインスポッティング(原題:Trainspotting)
8日より続編「T2 Trainspotting」が公開となるトレインスポッティング。

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本編を観た事がなくてもパッケージは見かけたことがある、という人も多いのでは。ジャンキーたちの姿をリズムよくドラマチックに、ときにばかばかしく刹那的に描いた歴史に残る作品。疾走感あふれまくりなのは若者のパワーではなくドラッグのおかげか、それともその両方か。復習がてら、あるいは予習がてらにぜひ続編とあわせて楽しんで欲しい。

 



■タンジェリン(原題:Tangerine)

31日から公開されている「ムーンライト」が非常に現代的なのは、彼の性的嗜好がさらっと、当たり前なアイデンティティのひとつとして描かれていることではないだろうか。

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 そこで、「タンジェリン」である。本作はトランスジェンダーの女性たちの日常を3台のスマホ(!)で撮影したという斬新な作品。

28日間の服役を終え、出所間もない主人公のシンディは恋人の浮気を知りブチ切れ。太陽が照りつけるLAを怒り狂いながら駆けずり回る彼女とその友人、移民のタクシー運転手に襲い掛かる災難…。下ネタあり、Fワードありで笑える一方、あたたかな結末にほっこり。

 

こちらは現在Netflixで配信中。


タンジェリン 「予告」


 
■ジョン・ウィック(原題:John Wick)

 今年7月に続編が公開。「やったー!」

最愛の妻を病で亡くした可哀想な元殺し屋の男、ジョン(キアヌ・リーブス)。妻が遺してくれた子犬と平穏な日々を送るはずが、元雇い主のロシアン・マフィアの息子に襲撃されその子犬を殺されてしまう。 復讐に燃え滾るジョン、実はすごく「つよーい!」のである。

 

本作は「マトリックス」でキアヌのスタントコーディネイターなどを手がけたチャド・スタエルスキーの初監督作品。本作は日本のアニメや殺陣、ガンフー、マカロニ・ウェスタンなどから影響を受けたアクションが特徴とのことで、4月29日公開の「無限の住人」は1人VS300人だが、ジョンもそれぐらいの勢いで次から次へと敵をなぎ倒す。繰り返すが、事の発端は一匹の子犬の死である…。気持ちは分かるけど、なんだかシュール。

 

新作紹介:「ゴースト・イン・ザ・シェル」

1989年に士郎正宗の原作コミックが出版されて以来、スティーブン・スピルバーグ、ジェームズ・キャメロン、ウォシャウスキー姉妹をはじめ、全世界の様々カルチャーシーンに大きな影響を与えた、日本が世界に誇るSFアクションの金字塔「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」。およそ30年前に発表されたこの作品の中心的なテーマが身近なものになりつつあると共に、その人気はますます衰えるところを知らない。これまでに記念碑的な2本のアニメ映画と2つのテレビシリーズ、小説、ゲームなどで展開される「攻殻機動隊」が遂にハリウッドで実写化される。

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(C)MMXVI Paramount Pictures and Storyteller Distribution Co. All rights Reserved.

 

古くは「七人の侍」から「リング」や「ゴジラ」など数々の日本の作品がハリウッドで映画実写化されるなか、日本が世界に誇るコンテンツの一つである漫画・アニメ実写化のニュースが次々と飛び込んできている。すでに公式に発表されているものから実写映画化の権利争いの真っ只中にあるものを含めると「ポケットモンスター」、「NARUTO」、「TIGER & BUNNY」、「DEATH NOTE」などが挙げられる。そんななか、真っ先に公開されるのが「攻殻機動隊」の実写映画版である「ゴースト・イン・ザ・シェル」だ。

 

世界中にファンを持つ「攻殻機動隊」なだけに、その期待と注目はこれまでの実写化をはるかに凌ぐといっても過言ではないだろう。もちろんそのプレッシャーは監督をはじめとし製作陣やキャストたちに大きくのしかかることになるが、完成した本作を観るとその熱量とパワーに驚かされる。先に行われた会見ではルパート・サンダース監督が原作の熱心なファンであり監督を切望していたことや、バトー役のピルー・アスベックが14歳の頃にアニメ映画を観て以来ファンであったこと、オウレイ博士役のジュリエット・ビノシュはSF作品に馴染みがなかった頃から出演を迷っていたところ、原作の大ファンであるという息子に後押しされたということなど、いかに本作が世界中の人に愛され、影響を与えているのかということを改めて確信した。近年日本でも様々な作品のリメイクや実写化がされているが、それが成功する要因の一つに監督がいかに作品のファンであるかということがいわれている。おそらく本作はそれにあたるだろう。しかも単なる原作へのオマージュや再現ではなく、元々ある世界観を忠実に守りながら敬意を払いつつも、それを越えようとする試みがいくつもみられる。

 

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士郎正宗氏による原作コミックが発表された当時と比べると私たちの世界はより原作の世界へと近付いていることは間違いない。ロボットと人間の関係性を語る機会はますます増えており、一昔前ならごく限られた分野での話題であっただろうことも一般的な議題として扱われている。この物語はテクノロジーと人が共存する社会のなかで、人間とは何なのか、魂とは、意識とは、という根源的なテーマを投げかけてきた。
今回の「ゴースト・イン・ザ・シェル」では、主人公である少佐(スカーレット・ヨハンソン)は連続殺人事件の捜査にかかわるなかで、自身の脳にわずかに残された過去の記憶へとつながり、彼女の存在自体を揺るがす展開へと発展していく。少佐を演じたスカーレットはこれまでにリュック・ベッソン監督のアクション・サスペンス「LUCY/ルーシー」(14)などでも見事なアクションを演じてみせたが、今回は1年以上をかけてストイックな役作りに挑んだという。全身義体という役柄はいわば、人間が人間ではない動きをしてみせる必要がある。スカーレットは見惚れるほどのアクションと銃撃シーンを演じるだけでなく、複雑な感情を持ち合わせた少佐の繊細な表情を見事に演じている。

 

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特筆すべきは本作が描く未来の街並みをはじめとする世界観だ。本作は主にニュージーランドのウェリントンで撮影され、そのほかに香港や上海でも撮影を行ったという。「ゴースト・イン・ザ・シェル」は「攻殻機動隊」のコミックやアニメ版にくわえてキューブリック監督の作品や80年代後半から90年代前半のデザインなどからインスピレーションを得たという。近未来的なホログラムが街角に溢れるなか様々な国の言葉が混ざり合う一方で、どこか洗練されていないデザインや清潔とは言いがたい露店が同居するという混沌とした世界は、全体的に青みがかった灰色に覆われている。さらにそこに登場する名もなき人間たちはテクノロジーと繋がる一方で労働者や売春婦(?)も存在していて決して画一的ではない。さらに「攻殻機動隊」ファンなら間違いなく目につくであろう細かな演出もその街角のなかに発見することができ、そんなところにも製作陣の原作に対する愛情を感じる。また、サンダース監督は黒澤明監督など日本映画も意識したと言うように、特にビートたけし演じる荒巻の見せ場ではその気配を感じ取ることができる。

 

個人的には普段3D映画は敬遠しがちだが、本作に関しては3Dで観ることをおすすめしたい。ニュージーランドには最高水準の撮影スタジオや最先端のデジタル・VFX企業があるというが、まさに職人技ともいうべき技術が惜しみなく体現されている。テクノロジーを駆使した映像美は3Dで観ることによってその魅力がさらに増大し、立体的に浮かび上がる街並みを間近に体験することでよりいっそう「ゴースト・イン・ザ・シェル」といういつか来るかもしれない将来を擬似体験することに向いている。

ハリウッドでは今後も様々な日本作品の実写化が待機中だが、今年その皮切りにふさわしい「ゴースト・イン・ザ・シェル」にダイブしてみてはどうだろうか。

 

 

「ゴースト・イン・ザ・シェル」

■監督:ルパート・サンダース
■製作:アヴィ・アラッド、アリ・アラッド、スティーヴン・ポール
■脚本:ジェイミー・モス、ウィリアム・ウィーラー 、アーレン・クルーガー
■原作: 士郎正宗「攻殻機動隊 THE GHOST IN THE SHELL」
■出演:スカーレット・ヨハンソン、ビートたけし、マイケル・ピット、ピルー・アスベック、チン・ハン、ジュリエット・ビノシュ ほか
■原題:GHOST IN THE SHELL
■公開日:(北米)2017年3月31日(日本)2017年4月7日
■配給:東和ピクチャーズ
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■公式サイト:http://ghostshell.jp/

新作紹介:「ムーンライト」

 自分の居場所を探し求める主人公の姿を映像美と情緒的な音楽で綴った「ムーンライト」は、北米で大ヒットを記録し、第74回ゴールデン・グローブ賞で作品賞(ドラマ部門)を受賞、第89回アカデミー賞では作品賞、監督賞など8部門にノミネートされ、本年度の賞レースを席巻している。

 本作は戯曲「In Moonlight Black Boys Look Blue」が原案となり、長編2作目となるバリー・ジェンキンス監督によって映画化された。

 

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不思議な映画だった。

主人公のシャロンとは国も人種も年齢も違えば、取り巻く環境もまったく違うというのに彼の内に秘めた様々な感情が痛いほどに伝わって来る。

彼は口数が少ないうえにその心情を表すナレーションも一切ない。シャロンの目を通して映し出される大人たち、友人、風景の数々とそれらを彩る音楽がただひたすら観客の想像力をかきたてる。

 

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本作は主人公の成長をめぐる3つの章に分かれていて、そのひとつひとつは決して長くはない。章をまたぐごとに彼は成長し、彼を取り巻く環境も少しずつ変化しているが、特定の何かが大きくクローズアップされることはなく、つらいことも幸せな瞬間も同じように淡々と同じ時間のなかで過ぎていく。

だから2章の終わりの"ある事件"の後、3章で姿を表したシャロンの容姿の変化に驚く人は多いだろう。

 

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3章でシャロンの容姿は大きく変化するが、その眼差しには見覚えがある。

バリー・ジェンキンス監督は3人のシャロンを決めるにあたり、同じ雰囲気を感じさせる目をもつ3人を探したという。大人になったシャロンの身体がいくら大きくなろうとも幼少期や少年期の頃と同じようにどこか孤独を湛えた目をしている。

 

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「ムーンライト」は何か教訓めいたことを言ったり疑問を投げかけるような作品でもなければ答えを求めるような作品でもない。まるで"映画"のようにハッピーエンド、あるいはバッドエンドのような結末があるわけでなく、これからも続いていく一人の人間の自己をめぐる人生の物語だ。

 

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「ムーンライト」

3月31日(金)、TOHOシネマズ シャンテ他にて全国公開

配給:ファントム・フィルム

©2016 A24 Distribution, LLC

映画『ムーンライト』公式サイト

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